そして父になる 映像の構文(シンタックス)※注意映画の内容に触れる箇所あり
是枝裕和は好きな日本の映画監督の一人です。 テレビ番組のADをしながらドキュメンタリー番組の演出家をつとめ1995年に『幻の光』で映画監督デビュー。 AKB48のPVも手がけています。 好きな作品は映画「歩いても 歩いても」、テレビドラマ「ゴーイング マイ ホーム」。 最新作「そして父になる」さっそく観ました。 素晴らしかった。 子供の取替え事件を通じて揺れ動く2つの家族の物語です。 福山雅治、尾野真千子のエリート家族とリリー・フランキー、真木よう子のがさつな家族の対象が面白い。 テーマは深刻ですが、リリー・フランキーのひょうひょうとして演技が緊張を緩めてくれます。 特にリリー・フランキー、真木よう子の存在感が好きです。 個人的には、福山くんのお姉さんとしてYOUが出演してほしかった。 脚本、演出もですが、注目すべきは音楽と映像です。 音楽は、あえてピアノのみのシンプルなものですが、カナダ出身のピアニスト、グレン・グールドが演奏するバッハの「ゴールドベルク変奏曲」が非常に象徴的に使われています。 そして、映像の構図が非常に綺麗です。 映像には表現の構文(シンタックス)があります。 初めて、病院で2家族が会って帰りのシーン屋上から病院の駐車場を俯瞰するシーン。 左下に国産高級車、右上の電気屋さんのボロいバンがあり2つの家族が別々に車に乗って行く。 2つの家族の経済状況から趣味までを1シーンで表す。 そして、病院の螺旋階段を登るシーンは不安な心理状態を表します。 そして、ラストシーンは、福山くんが左、子供が右の路を歩くシーン真ん中に大きな街路樹があり二人を隔てます、そしてそれぞれの視点からカメラが交互に入れ替わり最後にその路が一つに交わる。 映像のシンタックスは、世界共通なので、誰でも直感的にワカルのです。 映像・音楽は世界共通の言語でもあります。 カンヌ国際映画祭 審査員賞を受賞したのも当然でしょう。 今度、スピルバーグ監督がリメイクするとのことですが、日本のテイストとは別なものになるのでは? 是枝裕和は21世紀の小津安二郎ではないでしょうか。